
不動産 M&A は、不動産を保有する会社の株式や事業を譲渡し、物件だけでなく契約関係や管理体制も承継する取引です。
通常の不動産売買とは、税務・法務上の手続きや、引き継ぐ資産・負債の範囲が異なります。
また、会社ごと取得する方法では、許認可や借入金、契約上の責任を引き継ぐ可能性も否定できません。
本記事では、不動産 M&A の仕組みや活用場面、売り手・買い手のメリットと注意点を解説します。
取引条件とリスクを整理し、自社に適した方法を検討するための基礎知識としてお役立てください。
不動産 M&A とは?
不動産 M&A では、不動産を保有する会社の株式や事業を譲渡し、会社を通じて物件や契約関係を承継します。
通常の M&A や不動産売買とは、評価の視点や引き継ぐ責任の範囲が異なります。
以下では、不動産 M&A の定義と目的、それぞれの取引との違いを詳しく確認していきましょう。
不動産 M&A の定義と目的
不動産 M&A とは、不動産を保有する会社の株式や事業を譲渡し、会社を通じて物件や契約関係を承継する取引の通称です。
また、株式譲渡では法人格が維持されるため、許認可が存続する可能性がありますが、種類によっては届出や承認を要します。
主な目的は、後継者不在への対応、資産管理会社の売却、事業再編などです。
もし、会社分割や事業譲渡を使用する場合は、承継する資産・負債や手続きが変わります。
そのため、取引の目的を明確にしたうえで、会社に残す資産と切り離す資産を整理し、適した方法を選びましょう。
通常の M&A との違い
不動産 M&A は法的に一般的な M&A の一種であり、両者を明確に分ける制度上の定義はありません。
一般的な M&A では、事業、人材、技術、販路など幅広い経営資源が検討対象です。
一方で、不動産 M&A では、保有物件の資産価値や収益性が取引価格を大きく左右します。
また、会社ごと取得する方法では、簿外債務や契約上の責任を引き継ぐ可能性も否定できません。
そのため、不動産の取得が主な目的であっても、物件価値だけで判断するのは避けましょう。
財務・法務・税務の調査を通じ、会社全体のリスクも確認すると安心です。
不動産売買との違い
通常の不動産売買では、土地や建物そのものを売買し、所有権移転登記を行います。
一方で、株式譲渡による不動産 M&A では、物件を所有する会社は変わらず、株主と経営権が移転する仕組みです。
そのため、不動産の名義変更が原則不要でも、会社の借入金や契約、税務上のリスクを引き継ぐ可能性も否定できません。
もし、会社分割や事業譲渡を選ぶ場合は、資産移転や契約承継の手続きが発生します。
税金や登記費用も取引方法によって変わるため、譲渡対象と責任範囲を確認し、単純な物件売買との違いを比較しましょう。
不動産 M&A が注目される背景と活用シーン

不動産 M&A は、後継者不足への対応や資産管理会社の整理、事業再編などの場面で活用されています。
会社ごと譲渡する方法では、物件に加えて契約関係や管理体制を維持できる可能性があります。
以下では、事業承継と出口戦略における主な活用場面を詳しく確認していきましょう。
事業承継の選択肢としての活用
後継者がいない企業では、第三者へ株式や事業を譲渡する M&A が、事業承継の選択肢の一つです。
また、不動産を保有する会社を株式譲渡すれば、法人格や雇用契約、取引関係を維持したまま経営権を移せる場合があります。
ただし、買い手が事業を継続するとは限らないため、従業員の処遇や譲渡後の経営方針を契約交渉で確認しましょう。
さらに、経営者保証や借入契約をどのように処理するかは、金融機関との協議が欠かせません。
親族内承継や従業員承継、廃業とも比較し、売却条件だけでなく承継後の運営方針まで整理すると安心です。
資産管理会社の出口戦略としての活用
もし、資産管理会社のオーナーが引退や資産整理を考える場合、会社の株式譲渡は出口戦略の一つです。
物件を個別に売却して会社を清算する方法と比べ、手続きや税負担を抑えられる可能性があります。
一方で、株式譲渡が必ず有利になるわけではなく、株主構成や含み益、借入金、繰越欠損金、修繕負担によって結果が変わります。
そのため、株式譲渡、物件売却、会社清算について、手取り額とリスクを同じ条件で試算しましょう。
売却後の生活資金や会社を清算できる見込みも確認し、税理士や M&A の専門家に相談しながら各方法を比較することが大切です。
売り手側から見た不動産 M&A のメリット
売り手にとって不動産 M&A は、会社を存続させながら株式を現金化し、従業員や契約関係の承継も目指せる手法です。
税負担や承継範囲は採用するスキームによって分けて考える必要があります。
以下では、売り手側が期待できる主なメリットを詳しく確認していきましょう。
税負担を抑えられる可能性がある
個人株主が非上場会社の株式を譲渡すると、譲渡益には原則として所得税、復興特別所得税、住民税が課されます。
一方で、会社が不動産を直接売却し、その利益を株主へ分配する方法と比べると、株式譲渡のほうが手取り額を確保できる場合があります。
特に、売り手が法人であったり会社分割を利用したりすると、課税関係が変わる点に注意しましょう。
また、取得費や譲渡価格、含み益、清算時の課税まで含めて比較しなければ、実際の負担は判断できません。
最終的な手取り額は、税理士などの専門家に個別計算を依頼すると安心です。
会社を清算せずに資産を現金化できる
株式譲渡で会社を売却すると、会社は解散せず、売り手株主が株式の譲渡代金を受け取ります。
そのため、不動産を個別に売却し、債務整理や残余財産の分配を進める清算手続きを省ける可能性があります。
一方で、株式の譲渡価格には、不動産の価値だけでなく、借入金や修繕負担、簿外債務なども反映されるのです。
また、株式譲渡契約の交渉では、表明保証や補償責任が定められることも少なくありません。
清算より簡単と決めつけず、手取り額と実務負担を比べたうえで、売却後に残る保証義務や競業避止義務まで確認しておくと安心です。
従業員の雇用や取引先を守れる
株式譲渡では会社の法人格が維持されるため、従業員との雇用契約や取引先との契約は、原則として会社に残ります。
そのため、事業や管理体制を継続しながら、雇用や取引関係を引き継げる点がメリットです。
ただし、買収後の人員配置や労働条件、取引の継続まで保証されるわけではありません。
特に、契約に支配権変更条項が設けられている場合は、相手方への通知や同意が求められることもあります。
重要な雇用条件や取引条件を事前に整理し、最終契約で承継方針を明確にしたうえで、関係者への説明時期と情報管理にも配慮すると安心です。
買い手側から見た不動産 M&A のメリット
買い手は、不動産を保有する会社を取得することで、物件に加えて賃貸契約や管理体制もまとめて承継できる場合があります。
会社固有の負債や将来負担も引き継ぐ点は見落とせません。
ここでは、買い手側から見た主なメリットを詳しく解説します。
通常より安く不動産を取得できる
不動産 M&A では、買い手が借入金や修繕負担、税務リスクを踏まえて株式価値を評価するため、物件の市場価格より株式取得額が低く見えることがあります。
ただし、会社ごと取得すれば、必ず不動産を安く買えるわけではありません。
また、実質的な取得コストには、有利子負債、デューデリジェンス費用、仲介報酬、買収後の修繕費なども含まれます。
そのため、表面的な株式価格だけで判断せず、企業価値と純有利子負債を基に総額を試算することが重要です。
買収後に必要となる運転資金まで見込むと、資金計画の精度も高まるでしょう。
優良物件を効率的に確保できる
資産管理会社を取得すると、複数の不動産に加え、既存の賃貸借契約や管理委託契約などを一括で承継できることがあります。
そのため、物件を一つずつ探して契約を締結する手間を抑えられ、取得手続きを効率化できる点がメリットです。
ただし、対象物件が優良かどうかは、立地や収益性、修繕履歴、権利関係によって変わります。
また、非公開案件であっても、取得条件が有利とは限りません。
賃料収入だけで判断せず、空室率や更新条件、将来の修繕費、テナントの信用状況まで確認したうえで、会社全体の取得価値を見極めると安心です。
売り手側が押さえておくべきデメリットと注意点

売り手が不動産 M&A を進める際は、買い手候補の範囲や調査・契約にかかる負担を事前に把握しておきましょう。
また、財務や権利関係の問題は、価格調整や交渉中止につながる場合があります。
以下では、売り手側が押さえておきたい主なデメリットと注意点を確認していきましょう。
買い手が見つかりにくいケースがある
不動産 M&A では、買い手が物件だけでなく、会社の負債や契約上の責任も引き継ぐため、通常の不動産売買より候補が限られる場合があります。
特に、立地や収益性に課題がある物件、権利関係が複雑な会社、財務資料が不足している会社は、交渉が長期化しやすい傾向です。
そのため、売り手は不動産の収支、借入金、修繕履歴、訴訟、税務上の論点を売却前に整理し、希望価格の根拠を明確にしておきましょう。
また、売り手は仲介会社のネットワークや成約実績を比較したうえで、売却時期に余裕を持ち、不足資料を早めに補うと安心です。
手続きが複雑で時間を要する
不動産 M&A では、会社の財務・税務・法務に加え、不動産の権利関係、建物の状態、賃貸借契約まで確認するため、資料準備やデューデリジェンス、契約交渉に時間がかかります。
ただし、株式譲渡で株主総会の決議が常に求められるわけではなく、会社の定款、株式の譲渡制限、採用する取引手法によって手続きは変わるでしょう。
そのため、売り手は必要書類と社内承認の流れを早めに確認し、余裕のある工程を組んでおくと安心です。
また、売り手が関係者ごとの担当者と期限を一覧化して進捗を管理すると、確認漏れや手続きの停滞を防げます。
買い手側が押さえておくべきデメリットと注意点
買い手が不動産 M&A を検討する際は、取得対象の会社に簿外債務や将来の修繕負担がないかを幅広く確認しておきましょう。
また、物件調査だけでは会社全体のリスクを把握できません。
以下では、買い手側に生じやすい負担と、デューデリジェンスで確認したい事項を詳しく解説します。
簿外債務や偶発債務のリスク
株式譲渡では会社の法人格が維持されるため、帳簿に十分反映されていない債務や、将来発生する責任も会社に残ります。
特に、未払税金、訴訟、原状回復義務、土壌汚染、違法建築、修繕義務などは、買収後の負担となります。
そのため、買い手は財務・税務・法務・不動産の各調査を行い、確認したリスクを価格や契約条件へ反映させましょう。
また、買い手は表明保証、補償、価格調整、エスクローなどを組み合わせ、責任の範囲を明確にすると安心です。
保険で補える範囲もあわせて検討すれば、想定外の損失を抑えられます。
デューデリジェンスの負担が大きい
不動産 M&A のデューデリジェンスでは、会社の決算や税務申告に加え、登記、境界、用途地域、建築確認、賃貸借契約、修繕履歴まで調査します。
そのため、確認範囲が広がるほど、弁護士、税理士、公認会計士、不動産鑑定士、建築士などへ支払う費用も増える場合があります。
ただし、費用を抑える目的で調査項目を安易に削ると、買収後の損失につながりかねません。
特に、買い手は取引金額と想定リスクに応じて優先順位を定め、重要な論点を重点的に確認しましょう。
買い手は調査結果を価格や表明保証、補償条項などの契約条件へ反映させることも欠かせません。
不動産 M&A の代表的なスキームと手法

不動産 M&A では、株式譲渡や会社分割など、目的に応じて複数のスキームを選べます。
また、承継する資産・負債、手続き、税務上の取扱いは、選ぶ方法によって変わります。
以下では、不動産 M&A の代表的なスキームと手法について、流れや特徴を詳しく確認していきましょう。
株式譲渡スキームの流れと特徴
株式譲渡は、不動産を保有する会社の株式を売買し、経営権を買い手へ移す手法です。
会社自体は存続するため、会社名義の不動産や契約は原則として維持され、物件ごとの所有権移転手続きを抑えられます。
一方で、借入金や簿外債務、税務上のリスクも会社に残る点には注意が欠かせません。
また、譲渡制限株式では、定款や会社法に沿った承認手続きが求められます。
売り手は財務・法務資料を整え、買い手はデューデリジェンスを実施します。
そのうえで、譲渡価格や表明保証、補償条件を交渉し、株主間契約、担保設定、契約上の経営権変更条項まで確認すると安心です。
会社分割スキーム(新設分割+株式譲渡)の流れと特徴
新設分割と株式譲渡を組み合わせる方法では、不動産事業を新設会社へ承継させ、その会社の株式を買い手へ譲渡します。
売り手は本体会社に残す事業と譲渡対象を分けられる点が特徴です。
一方で、不動産だけを任意に移せるわけではなく、承継する契約、債務、許認可、従業員を分割計画で明確にします。
債権者保護手続きの要否や金融機関の同意も確認しましょう。
もし、新設会社の株式を第三者へ譲渡する場合は、税務上の適格分割に該当しない可能性があります。
そのため、会社法と税法の両面から実行可能性を検証し、分割後の資金や人員まで設計するとスムーズです。
スキームの選び方のポイント
スキームを選ぶ際は、譲渡対象、株主の属性、借入金、契約、許認可、税負担、買い手の希望を同じ条件で比較します。
株式譲渡は会社全体を承継しやすい反面、不要な債務や潜在リスクも引き継ぐ可能性があります。
一方で、会社分割は対象事業を分けられますが、法定手続きや税務要件が複雑です。
もし、税額だけで決めた場合は、契約の承継や金融機関の同意が得られず、計画が進まない可能性もあります。
そのため、手取り額、実行期間、手続きの負担、実行リスクを比較しましょう。
買収後の管理負担や事業統合も含め、税理士や弁護士と総合的に判断すると安心です。
不動産 M&A にかかる税金の仕組み
不動産 M&A にかかる税金は、株式譲渡、会社分割、物件の直接売却など、採用する手法と売り手の属性によって変わります。
また、税率だけでなく、取得費、繰越欠損金、登録免許税なども手取り額に影響します。
以下では、不動産 M&A にかかる税金の仕組みと比較時の注意点を詳しく確認していきましょう。
株式譲渡スキームで発生する税金
個人が非上場株式を譲渡した場合、譲渡益には原則、所得税 15%と住民税 5%が課されます。
所得税額に復興特別所得税も加わり、合計税率は 20.315%です。
譲渡益は、売却代金から株式の取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
一方で、法人が株式を譲渡した場合は、譲渡利益が法人所得に含まれ、法人税などの課税対象です。
そのため、売却代金の全額へ一律の税率を掛ける計算ではありません。
取得費が不明確だと、税額の試算に影響する可能性があります。
もし、取得時期や取得価額の資料がある場合は、関連費用も整理し、売り手の属性に応じて税額を確認すると安心です。
会社分割スキームで発生する税金
会社分割では、税法上の適格分割に該当するかどうかで、移転資産や負債の譲渡損益を繰り延べられるかが変わります。
そのため、会社分割なら法人税が発生しないという一律の判断は避けましょう。
また、不動産の移転に伴う登録免許税や不動産取得税も、分割内容や適用要件によって取扱いが分かれます。
特に、新設分割後に新設会社の株式を第三者へ譲渡する計画では、適格分割に該当しない可能性もあります。
分割後の株式譲渡で利益が生じれば、その譲渡益も課税対象です。
消費税や地方税を含む資金負担を試算し、実行前に組織再編税制の要件を確認すると安心です。
通常の不動産売買や会社清算との税額比較
会社が不動産を直接売却した場合、売却益は法人所得に含まれます。
会社を清算して株主へ残余財産を分配すると、分配内容に応じて株主側の課税も検討対象です。
一方で、個人株主が株式を譲渡する場合は、株式の譲渡益に原則 20.315%の税率が適用されます。
ただし、借入金、株式や不動産の取得費、繰越欠損金、売却価格によって、手取り額は変わるでしょう。
そのため、株式譲渡が常に有利とは限らず、会社の存続や売却後の資金用途でも適した方法は異なります。
複数の手法を同じ前提で比較し、税額、諸費用、資金の残り方まで確認すると安心です。
不動産 M&A が税制上難しくなるケース
不動産 M&A では、取引の実態や組織再編税制の要件によって、想定した課税上の取扱いが認められないことがあります。
土地の直接譲渡と不動産保有会社の株式譲渡は、税務上の判定を分けて考える視点が欠かせません。
以下では、税制上の判断が難しくなる代表例を確認していきましょう。
短期所有土地の譲渡と判定される場合
特に、個人が土地や建物を直接売却する場合、所有期間によって譲渡所得の区分が変わります。
譲渡した年の 1 月 1 日時点で所有期間が 5 年以下なら、短期譲渡所得に該当し、長期譲渡より高い税率が適用されます。
一方で、不動産保有会社の株式譲渡は、原則として株式の譲渡に該当するのです。
会社が保有する土地の所有期間だけで、短期譲渡所得になるわけではありません。
株式の保有期間も土地とは別に確認し、税務上の取扱いを整理します。
そのため、売り手、対象資産、採用するスキームを明確にし、物件売却と株式譲渡の課税関係を税理士へ確認すると安心です。
新設分割が租税回避と否認される場合
特に、新設分割を利用しても、適格分割の要件を満たさなければ、移転する資産の含み益に課税が生じる場合があります。
形式上の要件を満たしていても、取引全体の事実関係によっては、取引当事者が租税回避防止規定の適用可否も確認します。
ただし、節税目的が含まれるだけで直ちに否認されるわけではありません。
そのため、事業上の目的、承継する人員や契約、分割後の運営実態を整理しておきましょう。
税務要件と取引の合理性を文書で説明できる状態にすると安心です。
あわせて稟議書や事業計画など、判断過程を示す資料も保存しておきましょう。
不動産 M&A の進め方と実務フロー
不動産 M&A は、資料整理、買い手探し、条件交渉、デューデリジェンス、最終契約、クロージングの順で進むのが一般的です。
案件によって必要な許認可や同意手続きは異なります。
以下では、不動産 M&A の各段階で行う作業と注意点を詳しく確認していきましょう。
事前準備と相談先の選定
事前準備では、決算書、税務申告書、株主名簿、登記事項証明書、借入契約、賃貸借契約、物件の修繕履歴などを整理します。
また、売り手は希望価格だけでなく、譲渡理由や承継してほしい条件も明確にしておきましょう。
一方で、売り手は相談先として、不動産と M&A の双方に知見がある支援機関を選びます。
なお、手数料や利益相反の説明が明確かどうかも比較してみてください。
さらに、必要に応じて、支援体制へ弁護士や税理士も加えましょう。
そのうえで、各専門家の役割と費用負担、支援機関との契約内容を書面で確認し、後から見返せるように保管すると安心です。
買い手探しから基本合意まで
買い手候補を探す際は、匿名の概要資料を使用して情報を管理します。
具体的な検討へ進む相手とは、秘密保持契約を締結するのが一般的です。
その後、価格、譲渡対象、経営者の引継ぎ、従業員の処遇などを交渉し、主要条件を基本合意書へまとめます。
ただし、基本合意書は一部の条項を除いて法的拘束力を持たせない設計が多いものの、拘束力の範囲は案件によって異なります。
そのため、独占交渉権、費用負担、解除条件を確認してから署名すると安心です。
合意した重要事項は口頭だけで済ませず、必ず書面に残しておきましょう。
デューデリジェンスと最終契約・クロージング
基本合意後、買い手は財務、税務、法務、不動産などのデューデリジェンスを行います。
調査結果を踏まえ、価格や契約条件を再検討する流れです。
その後、双方が合意できれば、株式譲渡契約などを締結します。
代金の支払い、株主名簿の書換え、役員変更、必要な同意取得を経てクロージングします。
一方で、株式譲渡では不動産の名義変更が通常不要ですが、会社分割や事業譲渡では登記などの手続きを行うのです。
そのため、前提条件と提出書類を一覧化し、完了状況を双方で確認すると安心です。
クロージング後の届出や引継ぎ日程も事前に整理しておきましょう。
不動産 M&A の成功事例と失敗を防ぐポイント
不動産 M&A の成否は、選択するスキームや価格設定だけでなく、事前調査の精度にも左右されます。
想定事例と実在事例を区別し、条件を正確に示す姿勢も欠かせません。
以下では、不動産 M&A の成功事例と失敗を防ぐポイントを詳しく確認していきましょう。
株式譲渡による成功事例
株式譲渡の想定例には、賃貸物件を保有する資産管理会社の株式を第三者へ譲渡する方法があります。
売り手が財務資料や修繕履歴を整理し、借入金や将来の修繕費を価格に反映できれば、会社を清算せずに株式を現金化できます。
また、買い手は賃貸借契約を維持したまま運営を引き継げるでしょう。
ただし、株式譲渡によって税負担や取引期間が必ず小さくなるわけではありません。
そのため、成功事例として紹介する際は、実在事例の出典を示すか、想定例であることを明記しましょう。
数値や背景を示せない事例は、断定的に扱わないことが重要です。
会社分割を活用した成功事例
会社分割の想定例には、複数事業を営む会社が賃貸事業を新設会社へ承継し、その株式を第三者へ譲渡する方法があります。
譲渡対象を明確にできる点は利点ですが、契約や借入金、従業員を希望どおりに分けられるとは限りません。
また、適格分割の要件や債権者保護手続きも確認しておきましょう。
特に、税負担が個別売却より必ず小さくなると断定するのは適切ではありません。
そのため、実行前に各スキームの税額や手続き、買い手の受入条件を比較しましょう。
想定事例として紹介する際は、その旨を明確に示すことが大切です。
失敗を回避するための実務ポイント
不動産 M&A の失敗を防ぐには、売り手が資料を開示し、買い手が財務・税務・法務・不動産の各面を調査することが重要です。
また、物件の収益性だけでなく、境界や建築法令、土壌汚染、修繕履歴、賃貸借契約、借入金も確認しましょう。
特に、最終契約では、価格調整や表明保証、補償、解除条件、成約後の引き継ぎを明確に定めておくことが大切です。
そのうえで、当事者間で取引目的と優先条件を共有し、想定外の論点が生じた際の対応方法も決めておきましょう。
専門家の役割分担と意思決定の手順まで定めれば、手続きの停滞や認識のずれを防げます。
不動産 M&A に関するよくある質問
不動産 M&A を検討する際は、支援機関の手数料や相談先、個人所有物件の扱い、成約までの期間の確認が欠かせません。
条件は案件ごとに異なるため、一律に判断するのは困難です。
以下では、不動産 M&A に関するよくある質問へ順番に回答します。
不動産 M&A の仲介手数料の相場はいくらですか?
不動産 M&A の仲介手数料に一律の目安はなく、不動産売買の約 3%という基準は当てはまりません。
また、M&A 支援会社によって、着手金や中間金、月額報酬、成功報酬の組み合わせが異なります。
特に、成功報酬の算定基準と最低報酬を確かめることが大切です。
そのうえで、途中解約時の費用や消費税、実費を含む総額を書面で比較しましょう。
不動産 M&A の相談はどの会社に依頼すべきですか?
相談先には、M&A 仲介会社や FA、不動産会社、金融機関、弁護士や税理士があります。
一方で、仲介会社は売り手と買い手の双方を支援する場合があり、FA は原則として一方を支援します。
特に、不動産保有会社の実績や担当者の専門性、利益相反への対応を確認しましょう。
そのため、複数社の手数料、業務範囲、秘密保持の条件を比較すると安心です。
個人所有の不動産でも M&A は可能ですか?
個人所有の不動産売却は通常の不動産売買であり、会社の経営権を移す M&A とは異なります。
もし、物件を法人へ移して株式を譲渡するなら、移転時に税金が生じる可能性があります。
また、法人の設立費用や維持費も考慮しましょう。
そのため、譲渡所得税や登録免許税などを確認し、直接売却との手取り額を比較することが大切です。
不動産 M&A の検討から成約までどのくらいの期間がかかりますか?
不動産 M&A の検討開始から成約までに、統一された期間の目安はありません。
また、会社の規模や物件数、資料の整備状況、買い手候補、融資審査によって期間は変わります。
もし、問題の解消や関係者との調整に時間がかかる場合は、1 年以上を要することもあります。
そのため、売却希望時期から逆算し、資料整理や専門家選定を早めに進めましょう。
まとめ:不動産 M&A の基本と手法を理解しよう
不動産 M&A は、会社の株式や事業を譲渡し、物件だけでなく契約や管理体制も承継する方法です。
株式譲渡や会社分割があり、税負担や手続き、引き継ぐ資産と負債の範囲は異なります。
また、売り手は会社を清算せずに株式を現金化できる可能性がある一方、買い手には簿外債務や将来の修繕費の確認が求められます。
そのため、価格だけで判断せず、財務・税務・法務・不動産の各面からデューデリジェンスを行うことが重要です。
複数の手法を比較し、専門家と相談しながら目的に合う方法を選ぶ姿勢が、取引の成功につながるでしょう。
イエステーションは、不動産売買仲介のノウハウや本部支援を通じて、加盟店の事業運営をサポートします。
不動産 M&A 後に売買仲介事業の強化やフランチャイズ加盟を検討している方は、説明会または資料請求をご利用ください。
お問い合わせは下記より受け付けています。
- WEB:公式サイト「説明会お申込み」「資料請求・お問い合わせ」より
- 電話:03-5155-8030(9:00~17:00 日曜日・祝日を除く)



