
不動産業での独立や開業を考えているものの、失敗するリスクを考えると一歩踏み出せない方も多いのではないでしょうか。不動産開業の失敗は、決して運だけで決まるものではありません。失敗には明確な共通点があり、その原因を知ることが成功への第一歩になります。
本記事では、独立開業で失敗する人の特徴を7つに分けて解説します。あわせて具体的な対策も紹介しますので、独立する際にぜひご活用ください。
不動産業の独立・開業の現状
独立開業を成功させるには、まず市場の現状を正しく知ることが大切です。不動産業界は活気があるように見えますが、その裏には厳しい現実も存在します。
ここでは最新の公式データを基に、不動産業界を取り巻く4つの現状を解説します。
- 宅建業者数は11年連続で増加中
- 法人事業者は増加だが個人事業者は減少傾向
- 年間約4500業者が市場から撤退する実態
- 廃業理由の内訳:期限切れや免許取消の現実
これらの客観的な事実を知ることで、独立への心構えがより明確になるでしょう。
宅建業者数は11年連続で増加中
不動産業界への新規参入は活発で、宅建業者数は11年連続で増加しています。これは、廃業する業者数を上回るペースで、新しい業者が誕生していることを示します。
令和6年度末の業者数は132,291業者となり、前年度から1,828業者増えました。具体的な内訳を見ると、新規免許が6,383業者であるのに対し、廃業などは4,555業者です。
このデータは、不動産業が独立開業の選択肢として、依然として魅力的な市場であることを示しています。
参考資料:令和6年度末 宅建業者と宅地建物取引士の統計について
法人事業者は増加だが個人事業者は減少傾向
業者数が増加する一方で、その内訳には注意すべき点があります。法人として開業する事業者が増えているのに対し、個人事業者は減っているのが実情です。
令和6年度末のデータでは、法人業者が前年度比1.9%の増加となった一方、個人業者は2.9%も減少しました。また、個人業者の平均年齢は66.7歳と高めであり、年齢層の偏りが見られます。このことから、個人での独立にはさまざまな課題があると考えられます。
年間約4500業者が市場から撤退する実態
新規参入が多い一方で、毎年多くの業者が市場から去っている事実も見過ごせません。令和6年度には、全国で4,555の宅建業者が廃業などの理由で姿を消しています。
これは、1日あたり約12社が廃業している計算です。華やかに見える不動産業界ですが、その裏では厳しい競争に勝ち残れず、撤退を余儀なくされる事業者も少なくありません。この厳しい現実を直視し、なぜ撤退に至るのかを学ぶことが失敗を避けるうえで有用です。
廃業理由の内訳:期限切れや免許取消の現実
事業者の撤退理由は、自主的な「廃業」だけではありません。令和6年度の廃業など4,555業者の内訳を見ると、625業者が免許の「期限切れ」、104業者が法令違反などによる「免許取消」となっています。
免許の期限切れは、更新手続きを忘れるといった管理の甘さが原因と考えられます。また、免許取消は、顧客とのトラブルなど重大な問題を起こした結果です。
これらの数字は、事業運営におけるコンプライアンスや管理体制の重要性を示唆しています。
不動産開業で失敗する人の7つの特徴
不動産開業で失敗する人には、いくつかの共通した特徴が見られます。これらはスキル以前の、仕事への姿勢や考え方に関する問題であることが多いです。
ここでは、とくに注意すべき7つの特徴を掘り下げていきます。
- 過去の成功体験に固執するプライド
- お金の流れを把握しないどんぶり勘定
- 新しい知識やITツールへの無関心
- 顧客を軽視した自分本位な姿勢
- 人脈作りの重要性を理解しない孤独
- 何でも1人で抱え込む完璧主義
- 行動せず計画だけで満足
当てはまる点がないか、客観的に振り返りながら読み進めてください。
過去の成功体験に固執するプライド
会社員時代の実績が高い人ほど、過去の成功体験に固執する傾向があります。しかし、会社員としての成功と、経営者としての成功は全くの別物です。会社のブランドや看板があったからこそ、スムーズに進んだ仕事も多いでしょう。独立後は、その看板なしに個人の力で信用を勝ち取らなければなりません。
「自分はできる」というプライドが、新しいやり方を学ぶ素直な姿勢を邪魔します。過去の栄光は一度忘れ、ゼロから始める謙虚さを持つことが大切です。
お金の流れを把握しないどんぶり勘定
どんぶり勘定は、事業の失敗につながるリスクが高い習慣です。会社の資金と個人の生活費を混同し、明確な資金管理を怠ると、経営状況の悪化に気づけません。気づいたときには運転資金が底をつき、手遅れになるケースがあとを絶たないのです。収入や支出を細かく記録し、お金の流れを常に把握することが経営の基本となります。
事業で得た利益から、将来の投資や納税分を計画的に確保しておく意識も必要です。資金管理の徹底が、安定した事業運営の土台を作ります。
新しい知識やITツールへの無関心
不動産業界は法改正が多く、市況も常に変化しています。新しい知識を学び続けないと、時代遅れの営業手法で顧客の信頼を失いかねません。また、ITツールの活用は、今や小規模事業者にとって必須の経営戦略です。便利な顧客管理システムや業務効率化アプリが、低コストで利用できます。
「やり方を変えるのが面倒」「難しそうでよく分からない」といった理由でIT化を避けていると、競合との差は開く一方です。常にアンテナを高く張り、積極的に情報収集する姿勢が求められます。
顧客を軽視した自分本位な姿勢
独立すると、会社のルールに縛られず自由に営業できるのが魅力です。しかし、その自由を履き違え、自分本位な営業に走ってしまう人がいます。手数料を優先して、顧客の利益にならない物件を無理にすすめるような行為は避けるべきです。目先の利益を追うと、短期的な成功はあっても、長期的な信頼は得られません。
不動産仲介業は、顧客からの信頼がすべてのビジネスです。一人ひとりの顧客に誠実に向き合い、最高のサービスを提供することが、結果的に事業の成功につながります。
人脈作りの重要性を理解しない孤独
独立当初は、前職の同僚や顧客からの紹介が大きな助けになります。しかし、人脈作りの重要性を理解せず、1人で黙々と仕事をしていると、紹介の輪は広がりません。人脈とは、単なる飲み友達のことではありません。弁護士や司法書士、税理士といった他業種の専門家や、地域の有力者とのつながりも重要です。
彼らとの連携が、新たなビジネスチャンスを生んだり、顧客への提供価値を高めたりします。積極的に交流の場に参加し、信頼できるネットワークを築く努力が欠かせません。
何でも1人で抱え込む完璧主義
すべて自分でやろうとする完璧主義の傾向は、経営者にとって負担となる場合があります。独立当初は営業から経理、雑務まですべてを1人でこなす必要があります。しかし、自分の苦手な作業に時間をかけすぎるのは非効率です。その結果、もっとも重要な営業活動に時間を割けなくなり、売上が伸び悩むことになります。
苦手な業務や重要度の低い作業は、外部の専門家や便利なツールに任せる判断も大切です。自分の強みを最大限に生かすため、うまく「手を抜く」勇気を持ちましょう。
行動せず計画だけで満足
事業計画を緻密に立てることは有用です。しかし、その計画を行動に移さなければ、絵に描いた餅に過ぎません。失敗を恐れるあまり、情報収集や計画の見直しばかりを繰り返し、開業に踏み切れない人がいます。それでは、いつまでたっても売上は生まれません。
もちろん無計画な行動は危険ですが、ある程度の準備ができたら、まずは行動してみることが大切です。小さな成功や失敗を繰り返しながら、計画を修正していく柔軟さが成功を引き寄せます。
不動産開業で失敗しないための7つの対策
失敗する人の特徴を理解したうえで、次はその具体的な対策を考えましょう。独立開業を成功に導くためには、事前の周到な準備がすべてといっても過言ではありません。
ここでは、失敗を避けるために実践すべき7つの対策を紹介します。
- 勝てる市場を見つけ事業計画書を作成する
- 最低1年分の運転資金を確保する
- 他社にはない独自の強みで差別化を図る
- 開業前からWebサイトやSNSで情報発信する
- 信頼できる相談相手やメンターを見つける
- 業務効率化ツールを積極的に導入する
- 常に学び続け変化に対応する
これらの対策を着実に実行することが、安定した事業運営の礎となります。
勝てる市場を見つけ事業計画書を作成する
独立を思い立ったら、まず「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを明確にします。これが事業の根幹となるコンセプトです。たとえば、「単身者向けのコンパクトマンション専門」「子育て世代の戸建て探しに特化」など、ターゲットを絞り込むことで、専門性が高まります。競合の少ない市場を見つけ、そこでNo.1を目指すのが成功の定石です。
コンセプトが決まったら、具体的な数値目標を含む事業計画書を作成します。これは、金融機関から融資を受ける際にも必須の書類となります。
最低1年分の運転資金を確保する
自己資金が少ない状態での開業は、失敗に直結するもっとも危険な行為です。事業が軌道に乗るまでは、売上がなくても経費はかかります。事務所の家賃や広告費、通信費といった固定費は、最低でも1年分を運転資金として用意しておくべきです。資金に余裕がないと、精神的にも追い詰められ、冷静な経営判断ができなくなります。
開業資金と運転資金は明確に分けて考え、十分な額を準備すると安心です。必要であれば、
日本政策金融公庫などの公的な融資制度の活用も検討しましょう。
他社にはない独自の強みで差別化を図る
多くの不動産会社の中から、顧客にあなたを選んでもらうためには明確な理由が必要です。それが「他社にはない独自の強み」、いわゆる差別化要因です。「特定のエリアなら誰よりも詳しい」「住宅ローンの知識が豊富で、最適な提案ができる」など、何でも構いません。
あなた自身の経歴や得意なことを棚卸しし、それを顧客への提供価値に繋げられないか考えてみましょう。小さな会社でも、強みを尖らせることで大手とも戦えます。
開業前からWebサイトやSNSで情報発信する
独立後、すぐに集客で苦労しないためには、開業準備中からの情報発信が効果的です。個人のブログやSNSアカウントを開設し、専門家としての知識を発信し始めましょう。たとえば、「不動産選びのコツ」「住宅ローンの金利比較」と、見込み客にとって役立つ情報を発信し続けることで、少しずつファンが増えていきます。
開業する頃には、ある程度の認知度と信頼感が醸成されている状態が理想です。この地道な活動が、将来の安定した集客につながる先行投資となります。
信頼できる相談相手やメンターを見つける
経営者は、常に孤独な決断を迫られます。事業の悩みや不安を1人で抱え込まず、気軽に相談できる相手を見つけておくことは、精神的な安定につながります。それは、同業の先輩経営者かもしれませんし、税理士などの専門家かもしれません。客観的なアドバイスをくれるメンター(指導者)の存在は、事業の成長を大きく後押ししてくれます。
有料の経営コンサルティングなどを活用するのも1つの手です。孤独に陥らず、外部の視点を積極的に取り入れる姿勢が、事業の失敗リスクを低減させます。
業務効率化ツールを積極的に導入する
1人社長や小規模な会社にとって、時間はもっとも貴重な経営資源です。雑務に追われて、本来やるべき営業活動の時間がなくなる事態は避けなければなりません。現在は、顧客管理(CRM)や物流、経理・会計など、さまざまな業務を効率化するクラウドサービスが安価に利用できます。これらを活用しない手はありません。
ツールの導入には初期費用や月額費用がかかりますが、それによって生まれる時間や生産性を考えれば、十分に元が取れる投資です。積極的に情報を集め、自社に合ったツールを導入しましょう。
常に学び続け変化に対応する
一度開業したら、そこがゴールではありません。法改正や税制の変更、新しい集客手法の登場など、不動産業界を取り巻く環境は常に変化し続けます。これらの変化に対応できなければ、事業を継続することは困難です。
書籍やセミナー、業界のニュースなどを通じて、常に最新の情報をインプットする習慣が欠かせません。変化をおそれず、むしろチャンスと捉える前向きな姿勢が大切です。学んだことを即座に実践し、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善していくことで、競争力のある不動産会社へと成長できます。
不動産開業の成功率を飛躍させるフランチャイズという選択
ここまで紹介した対策を、すべて1人で完璧に実行するのは簡単ではありません。とくに業界未経験の方や、経営に自信がない方にとっては、高いハードルに感じるでしょう。
そこで有力な選択肢となるのが、フランチャイズへの加盟です。フランチャイズは、成功しているビジネスモデルやノウハウをパッケージ化した仕組みです。加盟することで、個人で開業する場合の多くの課題を、本部のサポートを受けながら解決できます。
失敗のリスクを大幅に減らし、事業の成功確率を飛躍的に高める戦略的な一手といえます。
まとめ:失敗の原因を知れば不動産開業は怖くない
不動産開業で失敗する人の特徴と対策を理解することで、成功への道筋が見えてきます。資金管理の甘さや集客力不足、ITツールへの無関心など、失敗要因を事前に理解し、適切な対策を講じることで成功確率は大幅に高まります。とくに、実績あるフランチャイズへの加盟は、個人での開業リスクを軽減する有効な選択肢です。
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