コラム

公開日 2025.12.01 更新日 2025.12.17

不動産の物上げとは?成果を出すためのコツや具体的な6つの方法を紹介

不動産仲介業で安定した収益基盤を築くには、優良な売り物件の確保、すなわち「物上げ」が不可欠です。
しかし、競争が激化する市場で、具体的に何から始めればよいか、どうすれば成果につながるか悩むこともあるでしょう。
効果的なアプローチには、戦略的なコツと正しい知識が必要です。
 

本記事では、不動産物上げの基本的な知識から、営業成果を最大化するための5つのコツ、明日から使える6つの具体的な実践方法を解説します。
ぜひ参考にしていただき、安定した物件仕入れの仕組みを構築してください。

不動産の物上げとは?

不動産ビジネスにおいて「物上げ」は、事業の土台となる活動です。
まずは物上げの正確な意味や、関連用語との違いを正しく理解することがスタートラインとなります。
 

物上げの基本を理解するために、以下4つの点を説明します。

  • 物件を仕入れて商品化する活動
  • 物上げと地上げの明確な違い
  • 再販業者との役割の違い
  • 不動産業界で物上げが重要な理由

それぞれ見ていきましょう。

物件を仕入れて商品化する活動

不動産業界における「物上げ(ぶつあげ)」とは、土地や建物といった不動産を仕入れ、販売可能な「売り物件」として商品化する一連の活動を指す業界用語です。
物上げのおもな手法は2つあります。
 
1つは、不動産所有者(売主)と媒介契約(売却活動の依頼を受ける契約)を締結し、販売活動を行い仲介手数料を得るモデルです。
 

もう1つは、再販業者などが物件を直接買い取り、 リフォームなどを施して価値を高めたあとに「再販」し、売却差益を得るモデルです。
ただし、物上げを専門とする業者が買い手を見つけられない場合などに、自ら物件を買い取って再販するケースも存在します。

物上げと地上げの明確な違い

「物上げ」と「地上げ」は、言葉が似ているため混同されがちですが、その目的と対象は明確に異なります。
物上げが対象とするのは、おもに戸建てやマンションといった既存の「建物」です。
 

一方で、地上げが対象とするのはおもに「土地」となっています。
複数の隣接する土地の所有者と交渉して土地を買い集め、大きな1つの区画にまとめ上げます。
その目的は、マンション建設や大規模商業施設などの再開発用地を創り出すことです。
 

つまり、物上げは既存の「点」としての不動産を扱い、地上げは開発のために「面」としての土地を創り出す活動であると区別できます。

再販業者との役割の違い

物上げ業者と再販業者は、不動産取引における立ち位置と収益源が異なります。
 

物上げ業者のおもな役割は、不動産所有者(売主)から売却の依頼を受け、その物件を購入する相手(買主)を見つける「仲介」です。
物上げ業者のおもな収益は、売主と買主から受け取る仲介手数料となります。
 

一方、再販業者は、物上げ業者などの仲介を通じて物件を「買い取る」側です。
買い取った物件にリフォームやリノベーションで付加価値を加え、自らが「売主」となって一般消費者に再販売します。
この際の売却差益(転売差益)がおもな収益となります。

不動産業界で物上げが重要な理由

物上げ活動は、不動産会社の売上基盤を支えるもっとも重要な業務の1つです。
なぜなら、売り物件という「商品」がなければ、いくら広告を打って購入希望者を集めても、売買契約を成立させられないからです。
 

近年はインターネットの普及により、購入希望者が自分で物件情報を探すことが容易になりました。
一方で、優良な売り物件の情報は常に不足しており、供給が需要に追いついていません。
そのため、能動的な物上げ活動によって市場に出る前の物件情報を仕入れ、自社独自の「在庫」を確保できれば、他社に対して優位性を確立できます。

不動産物上げ営業で成果を出すためのコツ5つ

ここでは、物上げ営業の成果を最大化するために意識すべき5つのコツを解説します。

  • 効果的なターゲットリストを作成する
  • 説得力のあるトークスクリプトを準備する
  • 近隣の不動産相場を把握しておく
  • 所有者との信頼関係構築を最優先する
  • 長期的なフォローアップを継続する

詳しく見ていきましょう。

効果的なターゲットリストを作成する

物上げ営業の効率は、アプローチ前のターゲットリストの質によって大きく左右されます。
まずは自社の強みが活かせるエリアや、得意な物件種別(マンション、戸建てなど)を明確にしましょう。
そのうえで、売却ニーズが発生しやすいターゲットに絞り込むことが肝心です。
 

たとえば、法務局が提供する登記情報を調査し、「相続」や「贈与」によって所有者が変わったばかりの物件をリストアップする方法は有効といえます。
相続した不動産は、管理の手間や相続税の支払いなどの理由から、売却が検討されやすいためです。

説得力のあるトークスクリプトを準備する

電話営業(テレアポ)や飛び込み営業を行う際、説得力のあるトークスクリプト(台本)を準備しておくことは不可欠です。
 

以下を盛り込んだ骨子を作成しましょう。

  • 会社名と担当者名を名乗る「簡潔な自己紹介」
  • 電話や訪問の「目的の明確化」
  • 相手にとってのメリットを伝える「価値提案」

ただし、スクリプトをただ読み上げるだけでは機械的になり、相手に不信感を与えかねません。
あくまで話の軸として準備し、相手の反応や状況に合わせて柔軟に会話を展開することが賢明です。

近隣の不動産相場を把握しておく

物上げ営業を行うエリアの不動産相場を正確に把握しておくことは、所有者の信頼を得るために大切です。
なぜなら所有者から「自分の物件はいくらで売れるのか」と尋ねられた際、根拠のある適正な査定価格を提示できなければ信頼してもらえないからです。
 
相場を把握するためには、レインズで過去の成約事例を調査し、現在の市場動向や競合物件の売り出し価格をチェックしましょう。
レインズ(REINS)は「不動産流通標準情報システム」の略称で、不動産会社のみがアクセスできる物件情報データベースです。
客観的なデータに基づいた誠実な価格提示こそが、信頼獲得の第一歩です。

所有者との信頼関係構築を最優先する

物上げ営業において、もっとも優先すべきは所有者との信頼関係を築くことです。
不動産の売却は、所有者にとって大きな決断であり、多額の資産を扱う行為といえます。
 
そのため、初回の接触から「売りませんか」と強引に営業をかけるのは逆効果です。
まずは「近隣の市況レポートをお持ちしました」など、有益な情報提供を切り口に接触しましょう。
 

そして、相手の状況や不動産に関する悩みに真摯に耳を傾け、「お困り事の相談役」としてのスタンスを示すことが大切です。
売却を急かさず、誠実に対応を重ねることが信頼につながります。

長期的なフォローアップを継続する

一度接触した所有者(見込み客)が、すぐに売却を決断するとは限りません。
そのため、一度断られたり、すぐに反応がなかったりしても諦めず、長期的なフォローアップを継続しましょう。
 

たとえば、市況レポートや不動産売却に関する有益な情報を、手紙やメールで定期的に送付し、関係性を維持します。
このとき、CRM(顧客管理システム)などを活用し、いつどのようなアプローチをしたかを記録・管理することで、効率的な追客が可能になります。
いざ売却を決意した際に、真っ先に相談相手として思い出してもらえる存在になることが目標です。

明日から実践できる!不動産物上げの具体的な6つの方法

成果を出すためには1つの手法に固執するのではなく、自社のリソースやターゲット層に合わせて、これらの方法を組み合わせることが効果的です。
 

ここでは、代表的な6つの物上げ方法を紹介します。

  • チラシやダイレクトメールを配布する
  • 電話でアポイントを獲得する
  • 既存顧客や知人から紹介を得る
  • 無料の相談会やセミナーを開催する
  • 一括査定サイトを有効活用する
  • レインズやポータルサイトを活用する

それぞれ見ていきましょう。

チラシやダイレクトメールを配布する

チラシやダイレクトメール(DM)のポスティングは、古くからある手法ですが、正しく行えば今なお高い効果が期待できます。
とくに、インターネットの利用が少ない方や、特定のエリアに集中してアプローチしたい場合に有効です。
 
肝心なのは、無差別に配布するのではなく、ターゲットを明確に絞り込むことにあります。
単に「物件募集」と書くだけでなく、「近隣の成約事例」や「簡易査定書」など、所有者に有益な情報を提供することで、反響率を高めることが可能です。

電話でアポイントを獲得する

テレアポ(電話営業)は、作成したリストに基づき、効率的に多くの所有者へアプローチできる手法です。
一件ずつ訪問する飛び込み営業と比べて、時間的・身体的なコストが低く、広範囲のターゲットに接触できるメリットがあります。
テレアポを行う際は、事前に準備したトークスクリプトに基づき、簡潔に用件を伝えることが有用です。
 
ただし、ビジネスマナーとして、早朝や深夜など非常識な時間帯にかけるのは厳禁です。
電話の目的はあくまで売却の意思確認や、次のステップである訪問アポイントを獲得することにあると意識しましょう。

既存顧客や知人から紹介を得る

質の高い見込み客情報を得るうえで、既存顧客や知人からの「紹介」は強力な手法です。
過去に取引して満足していただいた顧客には、定期的に連絡を取り、良好な関係を維持しましょう。
 
司法書士や税理士、弁護士といった「士業」とのネットワーク構築も有効です。
彼らは相続手続きや資産整理の過程で、不動産売却の相談を受ける専門家といえます。
日頃から情報交換を行い、専門家として信頼される関係を築いておけば、売却ニーズが発生した際に優先的に紹介してもらえる可能性が高まります。

無料の相談会やセミナーを開催する

不動産の売却や相続、空き家対策などをテーマにした無料の相談会やセミナーを開催することも、有効な物上げ手法の1つです。
メリットは「売り込まれる」ことに抵抗がある、潜在的な顧客層にアプローチできる点です。
 
相談会やセミナーの場では、強引な営業は一切せず、あくまで専門家として参加者の悩みに寄り添い、有益な情報を提供する姿勢に徹しましょう。
すぐに契約に結びつかなくても、自社の専門性や誠実な姿勢をアピールすることで、将来的に売却を検討する際の相談先として認知してもらえます。

一括査定サイトを有効活用する

不動産の一括査定サイトは、物上げ業者の集客・情報収集に役立つWebサービスの1つです。
メリットは、売却希望者向けのポータルサイトに自社情報を掲載することで、反響の獲得が期待できる点です。
 
ただし、査定価格を知りたかっただけの売却意向のない問い合わせも多く、必ずしも案件化の確度が高いチャネルというわけではありません。
送付する査定書は、詳細なデータに基づいた質の高いものを作成し、価格査定の根拠を顧客に説明したうえで専門性をアピールすることが大切です。

レインズやポータルサイトを活用する

レインズや一般の不動産ポータルサイトの情報を調査することも、物上げのヒントにつながります。
レインズを活用すれば、過去にそのエリアでどのような物件がいくらで成約したかの正確なデータを調査できます。
 

一般の不動産ポータルサイトを定期的にチェックし、長期間掲載されている物件や、頻繁に価格変更が行われている物件を見つけることも有効です。
これらの物件は売主が売却を急いでいるか、依頼先の不動産会社の販売力に不満を持っている可能性があり、チャンスが潜んでいるかもしれません。

信頼される物上げ業者になるためのポイント3つ

ここでは、信頼構築のための3つのポイントを解説します。

  • 相手の利益を第一に考えた提案をする
  • 豊富な知識と実績で安心感を与える
  • 誠実な対応で長期的な関係を築く

詳しく見ていきましょう。

相手の利益を第一に考えた提案をする

信頼される業者になるための第一歩は、自社の利益や都合を優先するのではなく、常に所有者(顧客)の利益を第一に考えた提案をすることです。
不動産売却は、顧客の人生設計にも関わる重大な決断といえます。
 

顧客の家族構成や将来設計、経済状況などを丁寧にヒアリングしたうえで、本当に今売却することが最善の選択なのかを一緒に考えるべきです。
場合によっては売却せずに賃貸に出すことや、リフォームして住み続けるといった選択肢を提示することも、専門家としての誠実さともいえます。
目先の契約ではなく、顧客の最善を追求するアドバイザーとしての姿勢が、深い信頼を育みます。

豊富な知識と実績で安心感を与える

顧客は、大切な資産の売却を任せる相手として、信頼できる「プロフェッショナル」を求めています。
そのため、不動産売買に関する専門知識はもちろん、関連する幅広い知識を身につけ、顧客のあらゆる疑問や不安に的確に答えることが有用です。
 

査定時には客観的なデータや豊富な取引事例に基づいて論理的に説明し、価格査定の精度と根拠を示すことで、顧客は安心感を抱きます。
日々の勉強と経験の蓄積を怠らず、専門性を高め続ける努力が欠かせません。

誠実な対応で長期的な関係を築く

誠実な対応を貫き、顧客と長期的な関係を築くという意識が肝心です。
宅地建物取引業法では、顧客判断に影響を及ぼす事実を故意に伝えないことや、「必ず値上がりする」といった断定的な判断を提供することは厳禁です。
 

こうした法令を遵守することは当然として、契約後も必要な連絡を怠らず、引き渡しまで責任を持ってサポートする姿勢が求められます。
法令遵守と誠実な対応こそが、企業の信用を守り、持続的な成長を支える基盤となります。

まとめ:不動産物上げを成功させ事業を軌道に乗せる

物上げのノウハウを実践し、安定した成果を出すには多くの課題があります。
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