
不動産事業を拡大しようと考えたとき、フランチャイズへの加盟は大きな選択肢の一つです。個人事業主や中小の不動産屋では、独自にブランド力を築くのは簡単ではありませんが、有名フランチャイズに加盟することで、知名度・信用力・ノウハウを得られる利点があります。
一方で、フランチャイズといっても加盟料やロイヤリティ、サポート内容、ブランドイメージなどその特徴は様々です。加盟前にしっかり比較・検討しなければ、思わぬ費用負担や方針の違いに苦しむかもしれません。
本記事では、不動産フランチャイズ業界の概要やメリット・デメリット、主要17社の比較ポイントと注意点を整理し、さらにイエステーションの加盟メリットまで詳しく解説します。スムーズに事業を軌道に乗せるため、各社の特徴を押さえたうえで最適な加盟先を選ぶヒントをつかんでください。
不動産業界のフランチャイズの特徴
不動産フランチャイズと一口に言っても、取り扱うジャンルは売買、賃貸、仲介、管理など多岐にわたります。中でも、売買仲介に強いフランチャイズや、賃貸管理に特化したものなど、それぞれ専門性が異なります。大手フランチャイズは全国的な広告展開や研修制度が整備されており、初心者からでも参入しやすい環境が整っているのが特徴です。
また、ブランドイメージや看板を使用できるため、独立するよりも信用力を高めやすい点がメリットです。しかし、ロイヤリティなどのランニングコストがかかり、経営の自由度がある程度制限される面もあるため、コストとリターンのバランスをしっかり見極めることが大切です。
不動産フランチャイズ加盟のメリット
まずは、不動産フランチャイズに加盟するメリットを紹介します。
ブランドイメージによる集客力を活用できる
大手フランチャイズの看板を掲げることで、初期段階から地域での知名度を獲得しやすくなります。個人の不動産屋が一から信用を築くより、はるかに速く顧客との接点を作ることが期待できます。テレビCMやインターネット広告など、フランチャイズ本部による全国的なPRも集客に寄与します。
加盟店同士のネットワークを構築できる
フランチャイズでは、同じ看板を使う加盟店間で情報共有や顧客紹介が行われる場合があります。遠方からの移住希望者や他地域の不動産情報を共有することで、契約獲得のチャンスが広がるかもしれません。勉強会やセミナー、加盟店交流会などを通じて人脈を広げられるのも大きな強みといえます。
加盟先の研修・サポートを受けられる
不動産売買仲介は法的知識や契約手続きが複雑です。フランチャイズの本部はマニュアルや研修制度を用意し、スタッフ教育やコンプライアンス管理をサポートしてくれるため、ノウハウ不足を補いやすいのが利点です。開業支援や店舗デザイン、ITツールの導入支援を行う本部も少なくありません。
提携関連業者のサービスをお得に利用できる
大手フランチャイズは、金融機関や保険会社、リフォーム・引越し業者などと提携していることがあります。加盟店がこうした業者のサービスを割引価格で利用したり、紹介手数料などを得る仕組みが整っている場合もあり、ビジネスの幅を広げる助けとなります。
フランチャイズ加盟のデメリット
一方で、フランチャイズ加盟により発生しうるデメリットも紹介します。
加盟料・ロイヤリティなどの費用がかかる
フランチャイズへの加盟時には、初期費用として加盟金や保証金がかかり、開業後も毎月ロイヤリティを支払う必要があります。売上が伸びない段階でもロイヤリティが固定または歩合で発生するため、経営計画を綿密に立てないと資金繰りに苦しむリスクがあります。
開業場所を自由に選べない場合がある
フランチャイズ本部がテリトリー(営業エリア)の重複を避けるため、出店可能な地域に制限を設けていることが多いです。自分が希望する立地で開業したいと思っても、既存店との競合を避けるため許可が下りない場合がある点に注意が必要です。
ブランドイメージがマイナスになることがある
フランチャイズ本部や他の加盟店が不祥事を起こした場合、そのマイナスイメージが看板を共有する全店舗に波及する恐れがあります。逆に、自店舗のトラブルがフランチャイズ全体の評判を傷つける場合もあり、看板を共有する以上イメージリスクが避けられません。
不動産フランチャイズの比較ポイント
不動産フランチャイズといっても様々な選択肢があるため、ここでは加盟を検討する方が比較すべきポイントを紹介します。
ジャンル
フランチャイズによって、売買仲介・賃貸仲介・土地活用・相続対策・リフォーム・管理など、専門とする領域が異なります。自社が得意とする領域や将来的に強化したい分野に合致しているかを確認しましょう。
加盟店数
加盟店数が多いほどブランド力やネットワークが強い場合が多いです。ただし、新興フランチャイズでも、独自の強みを持っていて急成長している例もあるため、数だけでなく加盟店の実績や評判も加味すると良いです。
加盟料
数十万円〜数百万円程度が相場とされる加盟料は、初期費用の中でも大きなウエイトを占めます。分割払いが可能か、返金条件があるかなども比較対象となります。
ロイヤリティ
月々定額制や売上歩合制など、フランチャイズ本部によって徴収形態が異なります。売上歩合の場合は軌道に乗るほどロイヤリティ負担が増え、定額制では売上が低い時期でも一定の支払いが必要です。自社の事業計画と相性の良い形を選ぶのが大切です。
加盟条件
宅地建物取引業の免許を保有しているか、不動産関連の経験年数、自己資金の額など、フランチャイズによって加盟条件が異なります。どのような事前準備が必要かを明確に把握することが重要です。
サポート体制
研修や開業支援、ITシステムの提供、営業・広告サポートなどがどれだけ充実しているかは、加盟後の経営に大きく影響します。サポート内容が具体的か、オプションではなく標準で利用できるかをチェックしましょう。
不動産フランチャイズ比較
以下では、代表的なフランチャイズ企業を紹介します。一部企業は賃貸メインの場合もありますが、売買仲介への対応も含め、さまざまなジャンルを網羅する企業が多いです。下記の表を参考に、加盟店数や費用・条件を簡易的に比較してください。
イエステーション
主に売買仲介を得意とし、エリア制を導入しているフランチャイズです。地域密着型のマーケティングを重視し、店舗ごとのブランド力を高める仕組みがあります。定期的な研修やコンサルティングサポートも充実しており、開業支援が手厚いのが特徴です。
加盟店数 197
加盟料 110万円
ロイヤリティ 仲介手数料の1.75%
加盟条件 宅建免許保有など基本要件あり
サポート体制 支部会への参加、加盟店訪問、セミナー開催
ハウスドゥ
全国的に知名度が高く、売買仲介からリフォーム、不動産投資まで幅広いメニューを展開しているフランチャイズです。ITシステムや店舗運営マニュアルが整備されており、未経験からでも比較的スムーズに事業を開始できる支援が提供されます。
加盟店数 700
加盟料 150万円
ロイヤリティ 11万円(税込)/月固定
加盟条件 宅建免許保有など基本要件あり
サポート体制 セミナー開催、店舗見学
SUMiTAS
売買仲介を中心に、相続や資産活用のコンサルティングにも力を入れているフランチャイズです。地元密着型の営業スタイルを推奨し、オリジナルのデザインや接客マニュアルでブランディングをサポートしています。
加盟店数 要問合せ
加盟料 150万円(税別)
ロイヤリティ 月額50,000円(税別)
加盟条件 宅建免許保有など基本要件あり
サポート体制 スーパーバイザー制度、本部スタッフによるサポート、FCポータルの提供
RE/MAX
アメリカ発の不動産フランチャイズで、世界各国に展開しています。エージェント制を特徴としており、仲介業務における個人の働き方が柔軟です。海外ブランドのイメージを活かし、国内ではまだ成長途中の勢力です。
加盟店数 約8,600店(世界)
加盟料 55万円~220万円
ロイヤリティ 固定で10万円(税別)/月、仲介手数料の6%
加盟条件 宅建免許保有など基本要件あり
サポート体制 トレーニングアドバイザーによる訪問アドバイス、海外研修、経営相談など
テナントの窓口
テナント仲介に特化しており、店舗・事務所探しのニーズに強みを持つフランチャイズです。商業物件のマッチングシステムや、売買仲介ではなく賃貸契約をメインとするビジネスモデルを取り入れているため、他社との差別化を図りやすい面があります。
加盟店数 約20店舗
加盟料 約100〜150万円
ロイヤリティ 定額制
加盟条件 宅建免許保有など基本要件あり
サポート体制 ウェビナーによる研修、営業ツールの提供、契約書の添削など
リノベ不動産
リノベーション需要の高まりを背景に、中古住宅売買とリノベーションをセットにしたサービスモデルを展開しています。中古物件探しから設計、施工までトータルサポートを行い、デザイン性やブランド力の高い店舗づくりを重視しているのが特徴です。
加盟店数 200以上
加盟料 396万円
ロイヤリティ 3%~1%(自社集客時)
加盟条件 宅建免許保有など基本要件あり
サポート体制 加盟店同士の交流機会提供、成功事例共有など
LIXIL不動産ショップ
LIXILグループが展開する不動産フランチャイズで、売買・賃貸だけでなくリフォームやエクステリア、建材販売との連携が強みです。住宅設備メーカーのバックアップを活かし、リフォーム提案がしやすい点が特徴といえます。
加盟店数 441
加盟料 要問合せ
ロイヤリティ 要問合せ
加盟条件 宅建免許保有など基本要件あり
サポート体制 セミナー開催、エリアスーパーバイザーによるサポート、各種研修など
不動産フランチャイズ加盟がおすすめの企業
不動産業を行う目的によってどのようなフランチャイズに加盟するかは異なります。
事業を拡大したい
既に不動産業を行っているが、大手ブランドの看板やノウハウを活用してさらなる集客やエリア拡大を狙いたい場合、フランチャイズ加盟が一つの手段となります。本部のサポートを得ながら業務の幅を増やすことで、売上増加を目指せる可能性が高まります。
不動産のノウハウを得たい
動産売買仲介の経験が浅い会社や個人事業主にとって、フランチャイズの研修・マニュアルは大きなアドバンテージとなります。宅建免許は取得済みでも、売買契約の実務・広告戦略・契約書作成など包括的なノウハウを学べるメリットが得られます。
事業継承を検討している
今後、自社の事業を子世代や幹部社員に継承する場合、フランチャイズシステムがあれば、運営マニュアルや本部のサポートによって円滑に経営が継続しやすい面があります。個人のノウハウに依存せず、組織的な運営がしやすくなることが期待されます。
不動産フランチャイズへの加盟に向いている人
不動産フランチャイズへの加盟が向いている人が持つ2つの特徴を紹介します。
未経験で独立開業を検討中
不動産業界未経験からの起業は、法的手続きや営業ノウハウなどハードルが高めです。フランチャイズなら、ロゴや店舗デザイン、実務ノウハウなどを本部が提供し、スムーズに開業しやすくなります。また、ブランド力により顧客が集まりやすいのも利点です。
将来的に事業を拡大したい
個人事務所や小規模店であっても、売上拡大やエリア進出を目指すなら、フランチャイズのサポートを受けてノウハウや広告力を活かす選択肢が有効です。実績が伸びてきたら追加で支店を出すなど、本部のネットワークを活用して展開を加速させることができます。
不動産フランチャイズ成功のためのポイント
不動産フランチャイズで成功するために押さえておくべきポイントを紹介します。
立地・商圏を確認
不動産仲介業は店舗の立地と商圏の需要が大きく影響します。都市部であれば売買仲介、郊外であれば賃貸需要が高いなど、地域の特性を踏まえたブランド選びと出店場所が重要です。フランチャイズ本部に相談しながら最適な商圏を選ぶと事業が安定しやすくなります。
資金の準備
加盟料や保証金、ロイヤリティ、オフィスの開設費、広告費など多くの初期費用が必要です。開業後もしばらくは安定した売上がない可能性があるため、運転資金を含めて余裕を持った資金計画を立てることが成功の鍵となります。
収益予測を立てる
フランチャイズ本部の提示するモデル収支はあくまで一例であり、自社の立地や人材、営業力で得られる収益は異なります。物件の単価や成約率、地域の競合状況を踏まえた詳細な収益予測を行い、ロイヤリティを差し引いても十分に利益が残るか検証する必要があります。
相性のよいか
本部との方向性や経営方針が合わないと、ブランドイメージやサポートを活かしきれない恐れがあります。加盟前に担当者や経営陣の考え方、方針が自分たちと相性がよいかを確かめることが大切です。説明会や店舗見学、加盟店オーナーへのヒアリングなどを積極的に行うといいでしょう。
イエステーションに加盟する3つのメリット
イエステーションは、売買仲介に特化した不動産フランチャイズで、「地域密着型」「エリア制」を強みとしています。ここでは、イエステーションに加盟するメリットを3つの観点から紹介します。
広告・営業サポート
本部が全国的なTVコマーシャルやウェブ広告を行っており、加盟店はそのブランド力を活かして集客しやすいです。店舗ごとの集客方法や販促企画などもコンサルティングを受けられ、未経験でも安心感があります。
エリア制で競合が少ない
イエステーションはエリア独占契約を採用しているため、同じフランチャイズ店舗同士で競合しにくいのが特徴です。地域密着で売買仲介を展開する上で一定の市場が確保されやすい点が大きいです。
徹底した研修・教育
売買仲介の手続きや契約書類の作成ノウハウ、スタッフの育成など、フランチャイズ本部が研修やセミナーを定期的に開催しています。業界未経験や新規参入でも比較的スムーズに立ち上げられるサポート体制が整備されています。
メリット・デメリットを把握して不動産フランチャイズ加盟を検討しよう

不動産フランチャイズへ加盟することで、認知度やノウハウ、研修サポートなど数多くのメリットを享受できます。
一方で、加盟料・ロイヤリティといった固定費が負担となり、開業場所や経営方針の自由度が低下するデメリットもあります。 店舗運営を成功させるためには、業界全体の特徴や各フランチャイズの強み、加盟条件、費用を見極めることが不可欠です。とりわけ「加盟金・ロイヤリティ」「サポート体制」「ネットワーク活用」が重要な比較ポイントとなるでしょう。
イエステーションのように、地域密着で売買仲介を強化したい企業には最適な選択肢がある一方、リノベーション、賃貸など領域別の強いフランチャイズも存在します。自社の事業方向と合致したブランドを選ぶことが肝心です。