路線価について(2022年7月1日国税庁)

7月1日に、2022年度の路線価が発表されました。
路線価は、土地の評価をする必要がある相続税・贈与税の算出に使われます。
また、土地の売却価格がどれくらいになるか、ということを知りたい時にも路線価を活用できます。
路線価は毎年発表されますが、2022年はどのような傾向があったのでしょうか。
今回は路線価の概要と、2022年の路線価の傾向について解説します。

税金の算出に使用される路線価

2022年の路線価が7月1日に国税庁のHPで公開されました。
路線価は道路に面する1㎡あたりの標準的な価格で、相続税や贈与税の算出の根拠となる「相続税路線価」と、宅地等の固定資産税評価額の根拠となる「固定資産税路線価」の2種類があります。
更新頻度や発表元にも違いがあり、相続税路線価は国税庁が毎年7月1日に発表する一方、固定資産税路線価は、各市町村が3年に1度発表しています。

一般的に「路線価」といえば、相続税路線価のことを指します。
路線価の発表に先立ち、毎年3月中旬から下旬に国土交通省が公示地価を発表しますが、路線価は公示地価の約80%が目安となっています。
つまり、路線価を決定するにあたり、基礎となるのが公示価格なのです。
ちなみに、固定資産税路線価は公示地価の約70%が目安となっています。

路線価は全国各地の公道や、人や車の往来が多い私道に設定されていますが、日本全国の全ての道路に設定されているわけではありません。
そのため、路線価の設定されていない道路だけに土地が接していたり、そもそも路線価が設定されていない郊外の農村集落地域に物件があるといったケースもあります。
このような場合は、旗竿地評価や倍率方式など、それぞれの条件に合った方法で地価を算出する必要があります。

路線価が分かる場合は、路線価×土地面積で土地の評価額を計算することができますが、実際には、三角地、角地、斜面を含む、奥行きが深すぎるなどの理由から地価に補正をかけるケースもあります。
この場合は、評価額が下がる可能性がある点に注意が必要です。

路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認することができます。

なお、路線価は主に相続税・贈与税の算出に使用される、と書きましたが、必ずしもそうならない事例もあります。
首都圏のタワーマンションを相続したケースでは、路線価に基づき不動産評価を行い、相続税を0円として申告したところ、国税局はこれを認めず、不動産鑑定による評価額から相続税額を算出するよう要求したのです。
タワーマンションは、路線価と実勢価格のどちらに基づき評価されるべきかと裁判になりましたが、2022年4月に、最高裁判所は国税局の主張を認める判決を出しました。
露骨かつ過剰な節税対策が問題視され、課税の公平性に関わるとして国税局側が勝訴したのです。

本件で、国税局は例外規定と言われる「財産評価基本通達第1章総則6項」の「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価格は、国税庁長官の支持を受けて評価する」を持ち出し、路線価に基づいた不動産評価を却下しています。
実勢価格と路線価に大幅な乖離があったことが争点の一つになったものの、例外規定に基づく国税局の主張が認められた今回の判決からは、乖離がどの程度であれば国税局は大幅であると判断し、路線価による評価を適用しないのかが不明のままとなっています。
また、国税局が発表している路線価が、相続税算出の際の絶対的な基準になるわけではない、ということが分かります。
本件は、あからさまな節税対策を行ったことで、税金逃れとみなされ国税局に分配が上がりましたが、相続税・贈与税の算出は、路線価に基づく不動産評価が適用されないケースもある、ということを念頭に置いておきましょう。

2022年の路線価の傾向

国税庁が発表した「令和4年分都道府県庁所在都市の最高路線価」によれば、47地点のうち31地点で上昇か横ばいになっています。
マイナスとなっている地点も、マイナス幅が縮小しているところが大多数です。

路線価は住宅地と商業地が一緒くたになっていますが、公示地価は路線価とは違い、住宅地と商業地をそれぞれ確認することができます。
公示地価の動向を確認すると、全国では、住宅地も商業地も微増ながら回復傾向です。
ただ、東京圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏を除いた地方や、札幌市、仙台市、広島市、福岡市を含まない地方の回復は横ばいかマイナスになっています。

2022年の路線価、公示地価の動向からは、コロナ禍の影響が完全に抜けていないものの、その影響が昨年よりも和らいできていることが伺えます。

なお、住宅地の公示地価は全国でコロナ禍前からプラス成長が続いていました。
2021年はコロナ禍の影響でマイナス成長となりましたが、2022年に入り再びプラス転換した形です。
低金利が続いていることから、今後、住宅需要は全国的に回復傾向になると考えられます。
ただ、気になるのは、東京23区のマンション市場に陰りが見えてきたことです。
上昇が続いていた東京23区のマンション市場は、このところ下落傾向にあります。
市場が明確な下降トレンドになれば、いずれ地価にも影響を与えると考えられるため、今後の動向を注視する必要があります。

一方、商業地の公示地価については、インバウンド需要の恩恵を受けたエリアの回復が遅れているものの、国内旅行客を取り込めているエリアは回復傾向にあります。
政府は新型コロナウイルス対応の水際対策のさらなる緩和を決め、2022年9月7日からは入国時の陰性証明書の提出を不要とし、現在1日あたり2万人を上限としている入国者総数を引き上げる方針です。
今後、緩和がさらに進み、インバウンド需要が回復した際には、商業地も本格的に需要が回復するでしょう。

まとめ

毎年発表される路線価は、相続税や贈与税の算出に用いられます。
2022年の路線価は前年と比較してコロナ禍の影響が緩和されたものの、完全回復には至らず、本格回復は2023年以降になると考えられます。
社会情勢や地域環境の変化に伴い路線価は毎年変化しますので、しっかり確認しましょう。

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