フラット35の2022年10月からの金利引き下げについて

住宅ローンには様々な商品がありますが、その中でもCMなどでおなじみなのがフラット35です。
全期間固定金利型の住宅ローン商品であるフラット35は、2022年10月借入申込受付分から金利の引き下げ幅や引き下げ期間が変更されます。
その背景を解説します。

フラット35の金利はどう決まるのか

冒頭で書いた要にフラット35は10月借入申込受付分から金利が引き下げられますが、その解説する前に、フラット35の大まかな概要と、フラット35の金利がどうやって決まるのかということを解説します。

住宅金融支援機構と民間金融機関が運営する住宅ローンのフラット35には、全期間固定金利という特徴があります。
そのため、返済額が変わらず、資金計画を立てやすい点がメリットです。
また、審査が比較的緩やかであることも選ばれる理由の一つになっています。
その一方、フラット35には住宅の規模、耐久性等の基準や接道義務規定、住宅規格など様々な基準が設けられ、これらをクリアしないと利用できないといった、一般的な住宅ローンよりも厳しい条件が設けられています。

住宅購入者が金融機関を通じてフラット35を利用しローンを組んだ場合、このローンの債券は、住宅金融支援機構が買い取って証券化し、債券市場で機関投資家などに「機構債」として販売されます。
この機構債のローンチスプレッド(新規発行された債券の額面価額に対し毎年支払われる利息である「表面利率」と、条件決定時の参照国債利回りとの差)、日本の長期金利(新発10年物国債利回り)、住宅金融支援機構や金融機関の利益を含む金利を合計したものが、フラット35の金利になるのです。
機構債のローンチスプレッドは、住宅金融支援機構のサイトで確認可能で、例えば、2022年8月26日に発行された第184回機構債の場合は30bps(0.30%)となっています。

なお、住宅ローンの金利の設定時期には、申込時点での金利となる「申込時金利」と実際に融資が実行された時の金利である「実行時金利」の2種類があり、フラット35やほとんどの金融機関の住宅ローンは、実行時金利が適用されます。
実行時金利の場合、申込時よりも実行時の金利が下がれば、ローン利用者にとってはメリットになりますが、反対に上がると、資金計画が変わってくる可能性があります。
そのため、フラット35を利用する場合には、金利の動向に注意を払った方が良いでしょう。

フラット35の金利引き下げの背景

フラット35の金利は前述のように決定されますが、2022年10月の借入申込受付分から金利の引き下げが拡充されるのはどうしてでしょうか?
その理由として、2022年6月に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」が交付されたことが挙げられます。
今まで、300㎡未満の小規模住宅の場合、建築主には「建築物のエネルギー消費性能の向上を図るよう努めなければならない」という努力義務が課せられていました。
しかし、2022年6月の法改正によって努力義務が強化され、省エネ基準の適否と、省エネ基準に適合しない場合、省エネ性能確保のための措置を建築士から建築主に書面で説明することが義務付けられることになったのです。
住宅の省エネ化が強化・推進されることになったことを受け、フラット35の金利優遇の対象となる省エネ基準も同時に強化されることになりました。
それに伴い金利優遇や仕組みを改定することになり、従来の様々な金利パターンをシンプルで分かりやすいポイント制に変更することになったのです。
この変更によって、省エネ性能の高い住宅に対しては、基準金利から最大-0.5%×10年間の金利優遇が受けられるようになります。

フラット35のポイント制とは

フラット35のサイトには、2022年10月からの金利引き下げ方法について詳細な説明があります。
これによれば、基本的に

①住宅性能で選ぶ
②管理・修繕で選ぶ
③エリアで選ぶ

の3ステップで、どのくらいの期間、どの程度の金利引き下げが適用されるのかが分かるようになっています。
① で1~4ポイント、②で1ポイント、③で1または2ポイントが加算される形です。
①~③で加算されたポイントの合計が4ポイント以上になった場合に、基準金利から最大-0.5%×10年間の金利優遇が受けられることになります。
注意しなければならないのは、①で選択したフラット35の種類によっては、②のステップでポイントが加算されない、ということです。
中古住宅購入とリフォームのセットで金利引き下げが適用される「フラット35リノベ」の場合、金利AとBの2種類のプランがありますが、どちらも②のポイントは加算されません。

2023年4月以降は省エネ基準が要件化される

日本は2050年のカーボンニュートラル実現を目指しています。
それに向け、2021年10月に「第6次エネルギー基本計画」が発表され、2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)水準の省エネ性能を確保するとしています。
また、2030年度以降に新築される住宅・建築物は、ZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目標にしています。
これを受け、2022年6月に改正建築物省エネ法が参議院本会議で可決・成立し、2025年度からは、延床面積に関わらず、住宅をはじめとする全ての新築の建築物は、国が定める省エネ基準を満さなければならないことになったのです。
それに先立ち、フラット35は2023年4月より省エネ基準を要件化します。
2023年3月までは、断熱等性能等級2相当以上でフラット35の利用ができましたが、2023年4月以降設計検査申請分からは、

①断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上
②建築物エネルギー消費性能基準

のどちらかを満たさなければ利用できなくなるので、注意が必要です。

まとめ

フラット35は知名度が高く、また、長期間固定金利型のため、利用を検討する人の多い住宅ローンです。
本文で書いたように、国の省エネ住宅推進強化を受けて、2022年10月からはポイント制による金利引き下げの拡充が行われ、2023年4月からは、フラット35を利用するための省エネ基準がこれまでより厳しいものになります。
フラット35の利用を視野に入れる場合には、これらのことを考慮したうえで、購入のタイミングを決めた方が良いでしょう。

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